「長年、問題なく家賃が入ってきているから」
「ローンも完済済みで、もう負担もないから」
築年数の経ったアパートをお持ちのオーナー様から、よくこうした声を耳にします。
確かに、一見すると手間がかからず安定した資産のように見える築古アパート。
しかしその一方で、「本当に資産として効率よく働いているか」を冷静に見直している方は意外と少ないのが実情です。
そこで重要になるのが、「ROA(総資産利益率)」という視点です。
■築古物件に潜む「見えにくいコスト」
築30年、40年を超えるようなアパートでは、表面上の家賃収入が維持されていても、次のようなコストがじわじわと経営を圧迫します。
・修繕費の増加(外壁・屋上・給排水管など)
・設備の更新費用(エアコン・給湯器・インターホンなど)
・空室率の上昇(間取り・築年数・設備の競争力低下)
・原状回復費の増加
これらは毎年確実に発生する一方で、家賃は築年数とともに下落しやすい傾向があります。
その結果、手元に残る利益(実質収益)は年々目減りしくのです。
■「利益 ÷ 資産」で見るROAの本質
ROAは、「どれだけの資産を使って、どれだけの利益を生んでいるか」を示す指標です。
築古物件ではローンを完済しているケースも多く「問題ない資産」と安心感を持ちがちです。
しかし、建物は年数が経てば修繕や維持管理のコストが増え、資産としての実力は少しずつ低下していきます。
ROAで冷静に分析すると、「思ったほど儲かっていない」「資産が眠ったまま活かされていない」といった現実が浮かび上がってくるのです。
■築古物件こそ「見直しのチャンス」
築年数の経った物件は、建て替えによる再投資、売却、資産の組み換えなど、次の一手を検討すべきフェーズに来ている場合が多いです。
ROA分析は、その意思決定に必要な「見える化」の手段となります。
また、建物評価が低くなる一方で土地評価は維持されているケールも多く、相続・贈与対策の観点からも再構築の余地があります。
■まとめ:
築古アパートを「これまで頑張ってくれた資産」から「これからも活かすべき資産」へと再設計するには、ROAという経営視点が不可欠です。
なんとなく持ち続けるのではなく数字で判断し、「生かす」「動かす」「やめる」のいずれかを検討するタイミング。
それが、築古アパートを保有する今、ROAという視点を取り入れる最大の理由です。
本年も当ブログをお読みいただき、誠にありがとうございました。
日々のご相談や実務の現場を通じて、数字だけでは見えない判断の難しさや、その背景にある想いに触れる一年でもありました。
来年も、皆さまの判断の一助となるような情報発信を続けていきたいと考えております。
皆さまにとって実りある一年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。
どうぞ良いお年をお迎えください。