「オーナーが所有するアパートの表面利回りは8%あるから、賃貸経営は順調です」
こう言われたら、皆さんはどう思われますか?
本当に賃貸経営は順調なのか、今回一緒に考えてみましょう。
表面利回りは「年間家賃収入÷物件価格」で求められるシンプルな指標です。
けれども実際の賃貸経営力を測るには不十分な場合が多く、そこには「見かけの収益性」ともいえる落とし穴が潜んでいます。
例えば修繕費が多くかかっている物件でも、修繕費等の諸経費を考慮しない表面利回りは高く見えます。
しかし実際にオーナーの手元に残る利益はどうでしょうか?
修繕費や管理費などを差し引いた後の「本当の収益力」を示す指標が、「ROA(総資産利益率)」です。
■ROAとは?
ROAは「利益÷総資産」で求められます。
不動産経営においては、例えば「年間の手残り利益」を「物件の総資産額」で割った数値と考えるとイメージしやすいでしょう。
弊社では、このROA分析をオーナーの皆様に提案しています。
具体的には、不動産経営にかかる諸経費を差し引いた「年間の手残り利益」を「相続税評価額」で割りROAを算出しています。
なお土地の価格は1物4価(実勢価格、公示地価、固定資産税評価額、相続税評価額)と言われますが、弊社では相続対策との親和性もふまえ相続税評価額を採用しています。
ROAを見ることで、その不動産が「どれだけ効率よく利益を生んでいるか」が分かります。
同じように見える家賃収入でも、資産活用の効率には大きな差があることが明確になります。
■高利回り=高収益ではない
例えば次のようなケースを考えてみましょう。
・A物件:表面利回り10%、年間家賃収入600万円、手残り利益60万円
・B物件:表面利回り7%、年間家賃収入490万円、手残り利益120万円
一見するとA物件の方が収益性が高そうに見えますが、ROAで見ると結果は逆になるかもしれません。
「いくら収入があるか」ではなく、「いくら資産を使ってどれだけ利益を生んでいるか」を見ることで、初めて「経営としての実力」が浮き彫りになるのです。
■築古物件こそROAで見直しを
特に築年数が経過したアパートやマンションをお持ちの方にとって、ROAの視点は欠かせません。
運営費が増えやすく、表面上は黒字でも資産効率が非常に悪いケースも少なくありません。
こうした場合、建て替え・売却・資産組み換えなどの再構築を含めた判断が必要です。
ROAは、将来の再投資を検討するうえでも有効な指標になります。
■まとめ:ROAで経営判断を「見える化」する
不動産は持っているだけで安心しがちな資産ですが、事業として考えると「資産効率」が問われます。
ROAは、単なる家賃収入の多寡では測れない「経営の質」を見える化するツールです。
相続・資産再編・出口戦略を考えるうえでも、ROAという指標で現状を把握し次の一手を考えることが求められます。
表面利回りにとらわれず、ご所有の不動産が本当に生きた資産となっているかを、今一度見直してみませんか?